コンテンツへスキップ

記事: Bespokeを支えるプロセス 仮縫いーVol.3ー

COLUMN

Bespokeを支えるプロセス 仮縫いーVol.3ー

Bespoke shoe basting process Vol.3 by Yuki Shirahama Bottier

ビスポークシューズの完成までには、数値では測ることのできない感覚を形にする工程があります。Yuki Shirahama Bottierでは、その鍵となる「仮縫い(トライアルシューズ)」を重視。前回の透明樹脂による内部確認を経て、最終段階である「革製仮縫い」へと進みます。




前回の透明樹脂製仮縫いのレポートに引き続き、今回は革製仮縫いについてレポートします。
前回紹介した透明樹脂製の仮縫いでのフィッティング結果を踏まえて調整した木型で革製の仮縫いシューズを製作しました。

革製の仮縫いの際は、基本的に製品に使用する同素材を用い、ご納品時の靴のイメージがお客様に伝わりやすいよう製作します。
今回掲載する靴は手縫いモカのスリッポンでしたので、片足のみ手縫いモカを施しています。(通常仮縫い時はミシンステッチでのモカライン確認のみ。手縫いモカ仮縫いは別途アップチャージが必要です。)

革製仮縫いの段階ではフィッティング確認と同時に、お客様と対話しながらデザインラインの修正点も探っていきます。


⚫︎フィッティング確認の流れ

・立位での目視確認

・立位で手で触れることによることによる革のテンションと隙間の確認

・立位時のお客様の着用感ヒアリング

・歩行時のお客様の着用感ヒアリング


また、木型設計をする上での前提として、革靴はどのデザインでも通常使用される中で着脱時にシューホーンを入れると履き口のかかとの方が0.数ミリ単位で伸びていきます。そのため、当工房では長く履き心地良くご愛用して頂くために、設計の狙いとして甲周辺を少しきつめのフィッティングをご提案しています。


Customer trying on bespoke basting shoe during front view fitting at Yuki Shirahama Bottier atelier

まず立位で仮縫い靴を試着して頂き目視したところ、トップラインに開きはなくデザインのバランスもイメージに近いラインに仕上がっていました。
モカのラインや細かなデザインについてお客様にヒアリングをしていきますが、その中でもスリッポンの場合、タンの付け根からトップラインにかけては履き心地にも関わる特に重要な部分ですので、審美性と歩きやすさ両方に考慮しながら決定しています。


Side view of customer fitting bespoke basting shoe at Yuki Shirahama Bottier workshop

次に靴前足部に手を触れ、圧がかかりすぎている部分、また隙間がありすぎる部分などを確認しましたがこちらも 問題ありませんでした。
今回は敢えてタッセル下の甲の部分に少しシワが寄るぐらいの圧がかかる、きつめのフィッティングを狙い製作しました。
一口に『スリッポン』と言っても、特にタッセルスリッポンの場合は他のペニーローファーなどのデザインと比べても履き口が浅いため、かかとが抜けやすいという特徴がありますので、その点を考慮した設計となっています。もちろんタッセル下甲部分のシワがないよう設計する事も可能です。


Close-up view of forefoot section during bespoke basting shoe fitting at Yuki Shirahama Bottier Heel fit inspection on bespoke basting shoe at Yuki Shirahama Bottier atelier

サイドからもフィッティングを確認します。
前回の透明樹脂製仮縫い後、木型上で側面の肉盛りの修正を施しましたので、その部分についてお客様の着用感をお聞きしながら更なる調整が必要かどうか確認します。

トップラインについては、前回の修正の効果もあり浮きも無く履いて頂けました。
トップラインの開きや足の底面形状とインソールに乖離があると、靴の着用時歩く度に「プシュプシュ」という空気音や審美性を損なう原因となりますので、木型の形状をお客様の足に綺麗に沿わせる必要があります。


Detailed view of inner construction of bespoke basting shoe during fitting process at Yuki Shirahama Bottier

かかと側からも確認を行います。
スリッポンの履きやすさにおいて歩行時の脱げにくさが重要になってきますので、かかとの吸い付きの良さを入念に確認します。
左右共にに立位の状態ではかかとの付きが良いように見受けられましたが、歩行時には左足に浮きが見られましたので、ご納品時には左のみ木型のかかと部分を少し削る方向で決定しました。

掲載した靴の場合、ほぼ足と靴が合っているのと、前回の透明の樹脂の仮縫い靴で既に靴の内部を確認していますのでアッパーを切る作業は実施しませんでした。


Full view of bespoke basting shoe fitting post-adjustment at Yuki Shirahama Bottier

今回のスリッポンの仮縫いはほぼ追加の調整箇所も無く、良いフィッティングでご着用頂けました。
ここから仮縫い結果を踏まえて更なるブラッシュアップをした木型とパターンで、いよいよ製品製作の過程に入っていきます。

これまで全3回にわたり、Yuki Shirahama Bottierの仮縫い工程をご紹介して参りました。ビスポークシューズ製作の背景や、Yuki Shirahama Bottierならではのフィッティングの考え方が少しでも皆様に伝わっておりましたら幸いです。
アトリエでは一足目からスリッポンのご注文も可能ですので、ご希望の方は是非お問い合わせ下さい。

最後になりますが、I様、前回に引き続きご協力誠にありがとうございました。