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記事: Bespokeを支えるプロセス 仮縫いーVol.2ー

COLUMN

Bespokeを支えるプロセス 仮縫いーVol.2ー

ビスポークシューズの完成までには、数値では測ることのできない感覚を形にする工程があります。Yuki Shirahama Bottierでは、その鍵となる「仮縫い(トライアルシューズ)」を重視。その核心に触れるプロセスとして、樹脂製仮縫いを行い、足と靴の関係を丁寧に見極めていきます。




前回に続き、今回は「樹脂製仮縫い」について触れていきたいと思います。Yuki Shirahama Bottier では、基本的に2度の仮縫いを行っています。その最初の1回目には透明な樹脂製仮縫いシューズを使用します。靴内部の状態を視覚的に確認できることが、この工程の大きな特徴です。


樹脂製仮縫いシューズは、革製仮縫いのように歩行しながらの試着はできません。そのため、お客様には立位でご着用いただき、足と靴との関係性を丹念に見ていきます。




透明の樹脂製仮縫いシューズは、靴下・裸足の2パターンでご着用いただきます。お客様に着用感を伺いながら、各部に調整の印を付けていきます。




写真のように、皮膚の色が白く変わる部分は、足が靴内部に押し当てられている場所を示します。今回はスリッポンのため、足が靴の中で前に滑らないよう前足部に少し圧がかかるフィッティングを狙っています。




その部位にペンで印を付け、どの位置にどの程度の“足し”や“引き”が必要か、修正量を判断していきます。


見極めるポイントは多岐にわたりますが、特に重視しているのは以下の点です。
1. 足が無理なく靴に収まっているか(方向・角度)
2. アッパーのトップラインに不要な空間がないか
3. 骨の位置、足の動きを支える腱、硬くなった角質の状態
4. トウ(つま先)バランスが適切か
5. お客様にとってご希望のフィッティングに近づいているか


これらを総合的に判断し、木型に反映すべき修正箇所を決定します。透明の樹脂を通して、お客様ご自身にも“足が靴の中でどのように変化し、どのように収まっているのか”をご確認いただけることも、この工程の魅力です。


樹脂製仮縫いで得た情報をもとに、木型の修正、パターン、アッパー製作へと工程を進めていきます。1度目の仮縫いから約半年後、革製仮縫いシューズを用いて2度目のフィッティングを行います。


次回は、この2度目の仮縫いについてご紹介いたします。
また、文末になりますが、I様撮影のご協力誠にありがとうございました。