記事: RECOMMEND LEATHER LLAMA
RECOMMEND LEATHER LLAMA

Yuki Shirahama Bottierがお勧めの革をご紹介するRECOMMEND LEATHERシリーズの第二弾として、今回はリャマ革についてご紹介いたします。南米アンデスの高地に生きるラクダ科の動物、リャマ。一枚ごと、そして一枚の中でも部位ごとに異なるシボの表情と、ベビーカーフに通じる繊細なしなやかさが魅力です。前回ご紹介したKARAGRAIN LONGCHAMPとはまた異なる、型押しでは表現できない自然な表情が魅力の革です。今回も当アトリエの職人・白濵と村吉のトークを交えながらお届けいたします。
今回のコラムではRecommend Leatherの第二弾として、リャマ革について詳しくご紹介します。
美しいシボ感としなやかさが特徴的なリャマ。Yuki Shirahama Bottierでは約10年ほど前にイタリアから直接仕入れて取り扱いを開始して以来、その独特な風合いを生かした靴を多数製作しています。
「リャマとはどんな動物?」とご質問を頂くこともありますので、以下で基本的なリャマの特徴をご説明致します。
リャマは南米のアンデス山岳地帯に生息するラクダ科の動物で、アルパカをひと回り大きくしたような姿をしています。
日本では『リャマ』または『ラマ』と呼ばれ、英語では『Llama』、イタリア語では『Lama』と表記されます。非常に珍しい素材ですので、エキゾチックレザーに分類されています。
一点ずつ異なるLlamaのシボ感
まず、リャマ革において特筆すべき特徴なのは独特のシボ感だといえます。
一定したパターンをスタンプ状に加工していく型押しのグレインレザーと異なり、リャマ革はそれぞれの個体が本来もつ模様を生かしてタンニングされるため、一つとして同じ模様の革はありません。
また、同じ一枚の版の中でも部位によってシボの流れや大きさが変わるため、靴の製作時にはそれらを生かして表情を変化させることも出来ます。
Bespoke Apron Front Derby in Cognac Llama Leather
A round-toed country last
Norvegese construction with all-brown leather sole
ベビーカーフのようなしなやかさ
シボの風合いの他にリャマ革の特徴的な点として、そのしなやかさが挙げられます。
全体として繊維が大変緻密かつ繊細で、ベビーカーフと似たしなやかさを持っています。そのため足馴染みが非常に優れており、軽く柔らかな履き心地を求められる方に大変お勧めできる素材です。
当アトリエではしっかりとしたホールド感とリャマ本来のしなやかさを両立するため、ライニング素材の選定など様々な点に考慮しながら製作しております。
Burgundy Llama Leather
ボックスカーフとの違い
続いて、しなやかさや厚みをより分かりやすくお伝えするため、一般的な紳士靴に使用される牛カーフとの比較をしていきます。
一般的にヨーロッパ製のカーフの厚みは約1.4〜1.6mm。緻密でハリがある銀面、繊維全体に跳ね返すような弾性があるのが特徴です。可逆性が強く保型に優れますが、その分足馴染みに多少時間がかかる場合があります。
一方、リャマの厚みは約0.9〜1.1mm。カーフと比較すると繊維が全体的にふんわりと柔軟性があるのが特徴です。そのためカーフ等と比べて小指への強い圧が感じにくくなりますので、普段歩行時に小指の当たりが気になる方には非常にお勧めの革です。
Measuring the thickness of Llama Leather
カラーラインナップ
カラーラインナップとしては、現在下記カラーを取り扱っております。
ブラック
ダークブラウン
ネイビー
バーガンディ
※コニャックは現在製作中の一足をもって完売致しました。
仕上げによる風合いの変化
当アトリエで採用しているリャマ革は、仕上げを施さない素のままの状態だとややマットな質感ですが、アンティークフィニッシュを施すことにより、深い艶と渋味のあるダークなカラーに仕上げをすることが可能です。また、ご自宅でのケア方法としましては、ご納品後は通常の靴クリームにてお手入れが可能です。
Llamaを用いた実際の製作例
過去に当アトリエで製作したリャマ革の靴の作例をご紹介します。
Bespoke Long Vamp Oxford in Burgundy Llama Leather
A classic chisel toe –a sartorial shape
Toe medallion
Hand-sewn welted construction with all-black leather sole
Bespoke Long Vamp Oxford in Black Llama Leather
A classic chisel toe –a sartorial shape
Toe medallion
Hand-sewn welted construction with all-black leather sole
(写真右側)Bespoke Quarter-Brogue Oxford in Cognac Llama leather with antique finish
A modern chisel-toe last with a defined side wall
Hand-sewn welt construction with all light brown leather sole
Bespoke Long Vamp Punched Cup Oxford in Dark Brown Llama Leather
A classic chisel toe –a sartorial shape
Hand-sewn welted construction with all-black leather sole
Bespoke Full-Brogue Oxford in Cognac Llama Leather
A modern chisel-toe last with a defined side wall
Toe medallion
Hand-sewn welted construction with all light brown leather sole
Bespoke Apron Front Derby in Navy Llama Leather
A modern chisel-toe last with a defined side wall
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole
Bespoke Commando Sole Double Monk Strap in Dark Brown Llama Leather
A slim and refined almond toe last
Original buckle in sterling silver 925
Hand-sewn welt construction with Vibram sole No.100
Bespoke Long Belted Loafers in Dark Brown Llama Leather and Crocodile Leather with antique finish
A softed chisel toe last with raised side-wall
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole
Bespoke Chukka Boots in Dark Brown Llama Leather
A slim and refined almond toe last
Hand-sewn welt construction with Vibram sole No.100
職人からみたLlama
村吉「このコラムでは当アトリエで取り扱っているアッパー素材のリャマ革をご紹介しました。」
白濵「ダービーシューズの解説コラムに引き続き、今回も最後は私と村吉のトーク形式で、製作者からみたリャマ革の特徴についてお話していきます。」
村吉「それでは早速質問ですが、今回ご紹介したリャマは、白濵さんから見てどんなデザインに合うと言えますか?」
白濵「基本的にはどんなデザインでも合うと思うよ。オックスフォード、ダービー、ローファー、ブーツなど、どんなデザインにもいける。ただし、これはリャマだけではなくシボ革全体的に言えることだけど、フォーマルな靴にはあまり好ましくないかもしれないね。」
村吉「そうですね。これまでにも様々なデザインで製作していますが、どれもそれぞれの良さがありました。ところで、今回ご紹介した作例は比較的凝りすぎていないデザインが多いなと感じました。」
白濵「そうだね、トラディショナルなデザインにあえてリャマ素材を使うと格好良いと思う。」
村吉「リャマ革を使うにあたって、適した製法はありますか?」
白濵「リャマは柔らかく繊細な革なので、手製靴の技術が特に活かされると思うよ。工場生産では機械を多用することが多いので、吊り込み時にトゥラスター(吊り込みをする機械)で強く引き過ぎて革自体の伸び率を超えてしまったり、ダメージが増えたりする可能性がある。だからこそ、素材の伸び率を手先で繊細に感じ取れる手吊りが向いているんじゃないかな。」
村吉「そうですね、底付けに関しても銀面の繊細さがあるため、グッドイヤー製法と比べて一針ずつ力の加減をしながら縫っていくハンドソーンウェルテッドが適していると感じますね。また、仕上げについてですが、これまで製作したリャマ革の靴は、靴クリームだけでなくパティーヌの技法も用いて仕上げてきましたよね。クリームを入れるだけでも保湿やある程度の色の深さはでると思うのですが、なぜプラスアルファで染色の仕上げをするんですか?」
白濵「やはりリャマ独特のシボ感や風合いをより一層引き出したいから、というのが大きいかな。リャマは型押しの革とは全く違って、一目でリャマと分かる自然で不均一なシボ感が特徴だよね。一つとして同じものはないから、完成した靴も一足一足異なる表情になる。だからこそそういった個性を生かすためにもアンティーク風な加工をして、より奥行きのある風合いに仕上げたくなるよね。」
村吉「なるほど、アンティークフィニッシュの色艶の深みがリャマの個性ある質感をより引き立てているということですね。ところで、読者の皆様の中にはリャマ革のフィッティングの感覚が気になっておられる方もいらっしゃると思いますが、リャマ革で製作した靴の履き心地に関してはどうですか?」
白濵「リャマ革は柔らかいので、小指のあたりが気になりにくいのは、フィッティングにおいて良い点だね。また弾性が少なく柔らかいため伸びやすい特徴があるので、リャマ革の靴を製作する時には伸びやすさを考慮してカーフより木型を少し細めに削ることがあるよ。その際の調整は横幅だけでなく、上面も底面もカーフとは若干変える場合がある。仮縫いの段階でお客様と確認しながら製作することで、お客様ご自身が望む履き心地を実現できるように進めていくのが大切だと考えているよ。」
村吉「そういったご対応が出来るのはビスポークシューズの強みですね。リャマ革は他のアッパー素材に比べて薄いと思いますが、その薄さは仕上がりにどのように影響していますか?特に厚いクードゥ(約3mm)などの革と比べて、完成後の形がシャープに見えやすいとかそういう点はありますか?」
白濵「やはりシャープに見えやすくなるね。リャマのスマートな格好良よさが出てくるから、その素材の特性を生かした形に仕上げているよ。」
最後に
Yuki Shirahama Bottierお勧めのアッパー革素材の第二弾として、リャマをご紹介しました。リャマ革の現在の在庫状況につきましてはコニャックは在庫切れで完売、黒・バーガンディー・ダークブラウン・ネイビーは在庫がございますが、黒は残数がかなり減っている状況です。また、今後の追加の仕入れは今のところ未定となっておりますので、希望のお客様は是非お問い合わせの際にお申し付け下さい。
今後もお勧めの革をご紹介していく予定です。革の解説コラム第3弾のリクエストや今後コラムで紹介して欲しい内容がありましたら、是非ホームページのお問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。
また、今回掲載した以外の製作事例ははYuki Shirahama Bottier InstagramまたはGalleryでご覧頂けます。
執筆
Yuki Shirahama Bottier
白濵 結城
村吉 麻美