コンテンツへスキップ

記事: TALK ABOUT DERBY − Where did Derby come from? −

COLUMN

TALK ABOUT DERBY − Where did Derby come from? −

靴の定番デザインについて詳しくご紹介するコラムシリーズの第二弾として、今回はダービーシューズについてご紹介いたします。
紐靴の定番としてオックスフォードと双璧をなして長く愛されているダービーシューズですが、オックスフォードとはまた少し異なる歴史や魅力があるデザインです。今回は当アトリエの職人・白濵と村吉のトークを交えながらお届けいたします。




【ダービーシューズの基本】

ダービーシューズは日本では外羽根式と呼ばれる形状で、紐靴のハネ部分がヴァンプの上に乗る構造になっています。
ヴァンプの下に羽根がくるオックスフォードと対照的なデザインとされています。
広く普及している呼び名はダービー(Derby)ですが、ブラッチャー(Blucher)と呼ばれることもあります。




【ダービーシューズの歴史】

村吉 「今回のコラムは私・村吉と白濵さんのトークを交えながらダービーシューズについてお話していきます。」
白濵 「新しい試みとして、僕たち職人がお客様とどんな風にお話しながら各デザインの靴を製作しているのか、自然にお伝えできたら嬉しいです。」
村吉 「そうですね!では早速ですが、ダービーシューズの歴史について教えて下さい。」
白濵 「ダービーシューズの起源は、プロイセン王国の陸軍元帥が仕立てさせたブーツだという説が濃厚とされているよ。
彼の歩兵隊がそれを着用し、1815年のワーテルロ一の戦いで勝利を収めたのにあやかり、ヨーロッパ中の軍隊に採用されたとされているらしい。(※1)
それまでの靴は筒状の紐のないブーツが主流だったようだから、歩行性が悪かったと考えられるね。実際に僕もフランスでの修行時代にフランス軍事博物館で、ワーテルローの戦いの少し後の時代の靴を見てきたよ。下の画像はその時に撮影したもので、イタリア軍のノルベジェーゼ製法の外羽根式ブーツが展示されていたよ。」




フランス軍事博物館にて撮影
イタリア軍靴1800年代中頃


村吉 「そうなんですね、当時の靴が残っているのはとても興味深いですね。外羽根式の編上げブーツで、確かに歩きやすそうですね!」
白濵 「そうだね、これは個人的な見解だけど、1800年代までの戦闘ではの兵力の中心となっていた歩兵の歩行性が勝敗に大きく影響したのではないかと思うよ。プロイセン陸軍の時代、歩兵は全体の70〜80%を占めていたらしいからね。より早く疲れずに移動できることが勝利を左右したのかもしれないね。」
村吉 「オックスフォードの起源となった靴も十字軍が東方から持ち帰ったとされているようですし、内羽根式も外羽根式も現在主流となっている紐靴二種類はミリタリーと強い関係性があると言えそうですね。」(※2)
白濵「戦争は絶対にあってはならないことだけど、歴史的な戦いを通じて生まれたデザインが現在のファッションに繋がっているのは興味深いと感じるね。」




【ダービーシューズのデザイン】

ダービーシューズのデザインの分類としては定番としてご紹介するものだけでも、プレーントゥ・ストレートチップ・クォーターブローグ・セミブローグ・フルブローグ・エプロンフロント・Vフロントなど、多種多様なものがあります。
オックスフォードと同様、一般的にはプレーントゥやストレートチップはフォーマル性が高く、装飾が増えるにつれてカジュアル寄りになるとされています。
しかし現代ではその境界も以前ほど厳密ではなく、素材やスタイリング次第で幅広いシーンに取り入れられるようになっています。
紐靴におけるダービーシューズ特有の特徴として、オックスフォードと比べて羽根の形状の自由度が高いということが挙げられます。羽根のデザインの違いにより甲の見え方を大きく変えられるのもダービーシューズの魅力の一つです。
下の項ではこれまでに当アトリエで製作したビスポークシューズの作例写真と共に各デザインをご紹介いたします。




【ダービーシューズの種類】

■Plain Toe Derby(プレーントゥダービー)

「Bespoke Plane Toe Derby in Light Brown Goatskin Suede
A classic round toe last with a raised sidewall
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole」

甲の部分に切り替えの無い、すっきりとしたデザインです。
アイレットの数や羽根の形状、ラスト形状によってモダンなテイストからクラシックなスタイルまで幅広く表情を変えられるデザインです。




■Cap Toe Derby(キャップトゥダービー)

Bespoke Cap-Toe Derby in Vintage Black Grain Leather
A classic round toe last with a raised sidewall
Hand-sewn welted construction with all-black leather sole

爪先に一文字の切り替えがあるデザインです。




■Quarter Brogue Derby(クォーターブローグダービー)

Bespoke Quarter-Brogue Derby in Burgundy Museum Calf Leather “ILCEA RADICA”
A slim and refined almond toe last
Hand-sewn welted construction with Vibram sole EVA

キャップトゥの切り替えのラインに穴飾り(パーフォレーション)が施されたデザインです。




■Semi Brogue Derby(セミブローグ)

Bespoke Semi-Brogue Derby in Dark Brown Bison Leather
A round-toed country lastToe medallion
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole

クォーターブローグのトゥにメダリオンが配されたデザインです。より装飾性が高まり、カジュアルに振れています。




■Full Brogue Derby(フルブローグダービー)

BespokeFull-Brogue Derby in Light Brown Calf Leather “TANNERIE D‘ANNONAY VEGANO
A slim and refined almond toe last
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole

爪先の切り替えがウィングチップのデザインになり、パーフォレーションやメダリオンに加えて裁断時に端をギザギザにするピンキング(ギンピングとも呼びます)を施したデザインです。カントリーな要素の強いデザインです。




また、羽根の形状による甲の見え方や爪先の切り替えでも呼び方が変わるデザインもあります。

■Apron Front Derby(エプロンフロントダービー)

Bespoke Apron Front Derby in Dark Brown Bison Leather
A round-toed country last
Norvegese construction with all-brown leather sole

甲の部分に切り替え、またはモカのステッチを施したデザインです。トゥのセンターでパターンを分割し、縫い割りまたはスキンステッチなどを施す場合もあります。




■V-front Derby(Vフロントダービー)

Bespoke V-front Plain Toe Derby in Black Calf Leather “TANNERIES DU PUY CHATEAUBRIAND”
A slim and refined almond toe last
Hand-sewn welted construction with all-black leather sole

羽根の形状をシャープにすることにより、甲のパーツが見える部分がVの字にみえるようにしたデザインです。羽根を小さくするデザインなため、3穴で製作することが多いです。




羽根の形状に特徴があるデザイン

■Long Brogue Derby(ロングブローグダービー)

Bespoke Long Brogue Derby in Light Brown Calf Leather “TANNERIE D‘ANNONAY VEGANO”
A slim and refined almond toe last
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole

ロングブローグ自体はウィングチップが後ろまで長く引き伸ばされたデザインを指しますが、このデザインでは外羽根式が採用されることがほとんどなため、ダービーシューズの特徴的なデザインの一つとして紹介します。




■Variations of Plane Toe Derby(バリエーションズオブプレーントゥダービー)
アッパー全体を贅沢に一枚革に配置し、羽根とタンのパーツだけを切り替えたデザインです。爪先部分に切り替えが無いためプレーントゥダービーに分類はされますが、前述のプレーントゥダービーのように腰革と頭革が分割されているデザインとは異なった表情になります。羽根の形状の異なる3つの作例をご紹介します。

Bespoke Plane Toe Derby in Dark Brown Crocodile Leather
A round-toed country last
Norvegese construction with all-brown leather sole

Bespoke Plane Toe Derby in Brown Nubuck Crocodile Leather
A contemporary almond toe last with a defined side wall
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole

Bespoke Plain Toe Derby in Dark Brown Bison Leather
A contemporary almond toe last with a defined side wall
Hand-sewn welted construction with all-brown leather sole




【装いにおけるダービーシューズ】

1900年代初頭からテニスシューズとして活用されてきた歴史もあるダービーシューズ。(※3)前回ご紹介した内羽根と比較するとややスポーティまたはカジュアルな位置づけです。
内羽根と比べると根本的にややカジュアルなデザインではあるものの、現在ではビジネスシーンからよりアクティブなシーンまで幅広く使われています。

村吉 「オックスフォードはフォーマル寄り、ダービーはカジュアル寄りといった基本的な位置づけがありますが、実際のオーダーの現場ではお客様とどのようにお話されていますか?」
白濵 「もちろん基本のフォーマル・ドレス・カジュアルという位置づけはあるけど、近年では国内外問わずドレスコードも緩やかになってきているから、もっと自由にお客様のご着用シーンや洋服のスタイルに合わせてご提案しているよ。
例えばプレーントゥダービーは、基本的にはダービーの中ではフォーマルな位置づけとなっているけれど、カジュアルなラスト形状や厚めの底材や広めのコバなどを採用すればより幅広いシーンでも使って頂ける…というような感じで打ち合わせを進めているよ。」
村吉 「そうですね、現在ではアッパーのデザインだけでフォーマル、ドレスまたはカジュアルスタイルなのかは一概には決められなくなっていますね。お客様のご注文の際に、ご利用シーンをお聞きしてデザインをお勧めすることもありますか?」
白濵 「こちらからヒアリングをしていく中でデザインをお勧めすることもあるし、お客様ご自身で既に決めていらっしゃる方もおられるよ。デザインに迷われた場合は、お客様と会話をしながら細かくデザインを決めていくことが多いね。
また、ビスポークシューズではデザインだけではなくお客様の足型を加味しながらラストを作っていかないといけないから、アッパーデザインだけではなくラストの形状やフォルムを考慮してご提案しているよ。」




【最後に】

今回は靴デザイン解説コラムの第2弾としてダービーシューズについてご紹介いたしました。
オックスフォード・ダービーに引き続き、今後も靴のデザインについて解説していく予定です。
デザイン解説コラム第3弾のリクエストや今後コラムで紹介して欲しい内容がありましたら、是非ホームページのお問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。
また、今回掲載した以外の製作事例ははYuki Shirahama Bottier InstagramまたはGalleryでご覧頂けます。


執筆
Yuki Shirahama Bottier
白濵 結城
村吉 麻美

[参考書籍]
※1『DRESSING THE MAN(Alan Flusser、HARPERCOLLINS PUBLISHER)』195頁
※2『Chaussures(parkstone international )』79頁
※3『SEDUCTION DE LA CHAUSSURE(Jonathan Walfford、La Bibliotheque des Arts)』、142頁